7.私のオーディオと屋根裏部屋


トマス・ブリテンは、16世紀にイギリスの田舎で、灰を売るのを家業にしている貧しい一市民であった。しかし、彼は、もう一つの趣味の面をもっていました。それは、自分の屋根裏部屋で、35才から70才まで、毎週木曜日に、小音楽会を開いていたのである。みずから楽器を演奏し、友人の貴族と共に、17世紀のイギリス、イタリア、ドイツの楽曲をみごとに演奏していたのである。そしてその演奏を聴くために、市民、貴族を問わず音楽愛好家が、この狭い屋根裏部屋への階段を上がり下りしていたのである。演奏と共に楽譜の収集もこつこつし、貴重な音楽遺産を残している。

本当の音楽好きが、中世の音楽を、この木曜日に演奏し、また、このコンサートを楽しみにしている市民が、週1回集まり、コンサートの原点といえるような音楽への愛情を育てていったのである。

貧しく生まれても、この屋根裏部屋には、長年に渡り音楽会があり、バードやパーセルの音楽が流れ、様々に暖かい音楽が聞き手に音楽を心から楽しむという音楽会であった。この部屋には、金に変えられぬ平和と音楽が住んでいたのである。

私が、30年にわたり、取り組んできたタンノイによる音楽の探究は、このトマス・ブリテンの屋根裏部屋の椅子のにタイムスリップすることだとわかりました。

決して、広い立派なオーディオルームで聴くことが、音楽を探究するすることではなく、みずからの力でできた屋根裏部屋で、毎週、タンノイの奏でる音楽を楽しんでいくことの幸せを感じています。

平和な時代に、心豊かに音楽を楽しむことのできる部屋があり、友人がいて、LP、CDを自由に買える時代のありがたさに、感謝したいと思います。

さいごに、私がここまでやってこれたのも、妻の大きな理解と協力があったからだと思っています。

最近LPを出して聴いています

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